第39回寄附講座セミナー

39th International Seminar in Nichia Course, Anan National College of Technology
主 催: 阿南工業高等専門学校 地域連携・テクノセンター 寄附講座

日 時 : 平成28年3月18日(金)15:00〜17:00
場 所 : 阿南工業高等専門学校 創造テクノセンター棟 4階 マルチメディア室 
題 目 : 『我が国科学技術の果たすべき役割』
講 師 : 公益財団法人 本田財団 理事長 石田寛人 氏 (元科学技術事務次官)
昨年のノーベル経済学賞受賞者アンガス・ディートン教授の著書"The Great Escape"に言う「貧困と病気からの大脱走」に成功したのは、地球上の一部の人間であり、多くの人々は、未だにこの「大脱走」を果たしていない。現代の世界は、経済発展と生活水準において「Great Divergence(大分岐)」が生じている。現在の多くの紛争やテロは、この「大分岐」に起因するところが大きいように思われる。この大分岐、すなわち経済状態の乖離が発生した理由は、直接には産業革命であり、その原因となったルネッサンスと近代合理主義の勃興であろうが、さすれば、何故に西洋においてそのようなことが起こったのであろうか。また、我が国が、そんな西洋に追いついて、現在の先進国になっている所以は、何なのであろうか。我が国の場合、国民の勤勉さと緻密さ、そして外来のものを受け入れて的確に自らに合わせていく力、すなわち、受容度の大きさによって、西洋文明を自分流にこなし、ともかく、世界の「Tier1」に位置しうるようになったが、今後、「Tier1の国」の役割を果たし続け、世界の「大分岐」を「大収斂(Great Convergence)」に向かわせるのに積極的に貢献しうるのか、それとも、政治的経済的に衰退の道をたどってしまうのか、現在、その分かれ道に来ているように思われる。その岐路を進むにあたっての鍵は、科学技術が握っている。我が国が、今後とも科学技術活動を活発化し続けていけるのか、その活動の対象となるAI、IoT、インダストリー4.0、BigDataの活用など新しい方向の先に何があるのか、低廉安定なエネルギーの長期的確保は可能なのか。我が国科学技術の現況と、それに求められているものを考察する。   
 
題 目 : 『窒化物半導体ナノコラム結晶による可視域発光デバイスの革新』
講 師 : 上智大学 理工学部 機能創造理工学科 教授 岸野克巳 氏
ノーベル賞で脚光を浴びた窒化物半導体(InGaN系)は、緑、さらに赤色域になるにしたがって発光効率が減少し、赤色域InGaN LEDは暗くてよく光りません。半導体レーザの動作電流も急増し、InGaN系可視発光デバイスの発光域拡大は、材料的壁に直面しています。窒化物半導体ナノコラムは、直径数十から数百ナノメートルの一次元GaNナノ結晶で、ナノコラムで発現されるナノ結晶効果によってInGaN系可視域デバイスの課題解決に挑戦すべく、最近、世界的に活発なナノコラム研究が行われています。GaNナノコラムは、分子線エピタキシー(MBE)による結晶成長中の自己形成過程で、本講演者らによって最初に作られましたが、自然発生のためコラム径と位置がランダムに揺らいで、ナノデバイスとしての制御性が不十分でした。そこで、Tiマスクによる新たな手法を用いて、当時難しかったMBEによる選択成長法を開拓し、均一なナノコラム結晶の規則配列化を実現しました。ナノコラム規則配列化は二つのデバイス制御によって可視域発光デバイスに革新をもたらします。ひとつは「コラム径によるナノコラム内InGaN量子井戸のIn組成制御法の発見」で、もう一つは「ナノコラムフォトニック結晶効果の発現」です。前者によって、青色、空色、緑色、黄色を同一基板上に作りこんだ集積型ナノコラムLEDを実現しています。後者は、放射ビーム指向性の高いナノコラムLEDや面発光型ナノコラムレージングに応用することができます。これらはフルカラーディスプレイに革新をもたらしうる可視光ナノデバイスへの発展の基礎を与えます。
本講演では、最初にSi基板上のGaNナノコラムの選択成長法について述べます。AlN/GaN超格子バッファー層を用いてSi基板上にGaNテンプレート層をrf-MBEで成膜し、このテンプレートを核形成層とする方法とスパッターAlNバッファー層を核形成層とする二通りの方法で選択成長を実現しました。前者ではGaNナノコラムによる欠陥フィルタリング効果のコラム径依存性を中心に議論し、後者ではナノコラムLEDのSi基板除去フリップチップ実装法を述べます。次に、コラム径50nm以下の細線ナノコラムの均一規則配列化の選択成長法について議論します。ここではコラム径26nmまでのGaNナノコラム成長を得ています。一方、ナノコラムフォトニック結晶効果は、LEDとレーザの高性能化に寄与します。ここでは、放射ビーム角の狭い優れたビーム放射特性を有する橙色ナノコラムLEDについて述べ、ナノコラムフォトニック結晶の設計指針を議論します。また、ナノコラムフォトニック結晶をレーザ発振に展開し、多層膜反射鏡を下部に有するナノコラムレーザの光励起発振実験を述べつつ、スペックル雑音フリーレーザ応用性について指摘します。さらに、ナノインプリントで形成された2インチ基板の全面にナノパターンを用いた大面積ナノコラムLEDの試作について述べるとともに、さらなる大面積化への突破口を開くグラフェン/SiO2上の自己形成GaNナノコラム成長の最近の研究成果を簡単に紹介して、まとめます。

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