校長挨拶

 阿南工業高等専門学校は,昭和38年(1963年)に国立高等教育機関の一つとして設立されました。工学(ものづくり)に意欲を有する中学校卒業生を受け入れて,5年一貫教育によって実践的で創造的なエンジニアを育んでいます。この本科を卒業後(準学士の学位を得られます。)は,引き続いて2年間の専攻科に進学(専攻科を修了すると,大学卒業と同じ学士の称号が得られます。),または大学の3年次に編入学してより高度な学びを続ける,あるいは徳島県内外の企業に就職して日本そして世界で活躍しています。例年,求人倍率は本科,専攻科ともに優に20倍を超えています。

 本科は創造技術工学科の1学科制で,新入生は専門にかかわらず共通の教育を受けた後,2年次に機械電気情報建設化学の5コースのうちのいずれかに配属され ,専門領域を深く学びます。専攻科では入学時から機械システム・電気電子情報・建設システム・応用化学の4コースに分かれて学びます。誰も成し遂げていない未知の分野に果敢に挑戦できるエンジニアを育むために,専門科目の基盤となる理数系の数学・物理・化学に重点をおいています。また,思考やコミュニケーションの基盤となる国語・英語(英会話含む)・第二外国語,さらに政治・経済・地理・歴史・日本文化・哲学・法学・美術・体育などのリベラルアーツを学ぶことにより,人間力を育む教育を実施しています。専門科目でも,単なる公式当てはめに陥らないように,数学・物理・化学を基盤とした基礎原理を重視して教育するとともに,グループで実施する多くの実験・実習を取り入れて理解を深めるようにしていることが本校教育の特徴です。さらに,ロボットコンテストを初めとする種々のコンテストに積極的に参画,あるいは提携企業でのインターンシップ(単位認定しています。),さらにこれを発展させて高専での学習と企業での長期就業を繰り返すコーオプ教育(就業経験学習: ワークベースドラーニング),学生と企業が協働して課題を解決して社会展開を図るPBL(プロジェクトベースドラーニング)を取り入れています。これらを通して高専での学びを実践的に確認して,課題解決能力や社会人基礎力を涵養するとともに,社会に出てからも重要な「自ら主体的に学習を進めていく」力を育める環境を整備しています。これらの教育では,早くからIT技術に着目してLMS(ラーニング・マネジメント・システム: 学習管理システム)を積極的に導入(教材や授業VTRをWebで配信,授業登録・成績・単位取得状況確認,小テストをWebで実施)して,学びをより深化できるようにしており,現下のコロナ禍においても着実に教育を行える環境となっています。

 さらに,急激に変化する社会の要請に応えるため,「数理・AI・データサイエンス教育(リテラシーレベル)」(文部科学省)に認定された教育プログラムをコースにかかわらず提供するなどして,幅広い分野の知識・能力が得られるように配慮しています。さらに,将来のイノベータ創出を目指した卒業生の起業家や企業経営者等の講演を含む体系的なキャリア教育や技術者倫理教育にも力を入れています。

 このように,本校は「何を学んだか」ではなく,「何を身につけたか」を重視しています。学んだことを生かして,「真理・創造・礼節」の校訓のもと,未来を拓こうとする学生を支援しています。

 また,学内には地域連携・テクノセンターを開設して,民間との共同・受託研究や自治体との連携研究を積極的に推進しており,学生の卒業研究(本科)や特別研究(専攻科)にも活用しています。このセンターを核として,新技術等に関する公開講座や技術者のリカレント教育,さらに小・中・高校生・市民を対象とした講座(理科・工学教室)も行っており,今後とも地域の皆様とともに歩み,発展する所存です。

 終わりにあたって,日頃からご支援いただいている地域の皆様,企業の皆様に篤く感謝申しあげるとともに,今後とも変わらぬご支援をお願い申しあげます。この地に阿南高専がある意義をふまえ,私達は明日に向かって歩み続けます。

       令和4年(2022年)4月
                                                                             阿南工業高等専門学校長
                                                                                   箕 島  弘 二