Course of Chemical Engineering

  • コース概要
  • 在校生・卒業生の声
  • 授業風景・実験設備

新素材の開発・化学プラントの設計
化学・製薬・食品企業などで活躍できる即戦力エンジニアの育成!

学習内容

現代の科学技術の多くが化学に支えられています。物質を原子・分子レベルで究明・操作し、新しい材料や製品を作り出すことが求められています。
化学コースでは、講義に加えて実験・演習を多く取り入れて、実践的な知識を学びます。そして、材料や化学薬品の開発・製造・品質管理および化学プラントの開発などの分野で活躍するエンジニアの育成を行っています。また、進学希望者が必要とするより高度な内容を学ぶための基礎知識の取得を目指しています。
化学コースは、地域の声に応え2014年に設立された阿南高専で最も新しいコースです。地域や世界のニーズにマッチした即戦力になる人材の育成を目指して、時代の変化に合わせた授業内容の改善に努めています。

カリキュラム

  • 1

    ものづくり工学では各コースの内容が学習できる

    ものづくり工学では、機械・電気・情報・建設・化学の5つのコースを1年間かけて学習します。入学後にすべてのコースの内容を学習できるので、コース選択に熟考でき、ミスマッチが少なく、学生の満足度は非常に高いです。情報リテラシー1では、WordやExcelなどの実験やレポート作成で必要なソフトウェアを学び、デザイン基礎では製図の基礎を学びます。また、数学・理科・英語・国語・社会の基礎を学習し、専門教育に向けての基礎づくりを行います。体育を通じて体の動かし方や自己分析力、リーダーシップ、協調性を養っています。

    主要科目

    ・ものづくり工学
    ・情報リテラシー1
    ・デザイン基礎

  • 2

    化学分野の基礎を学習する

    有機、無機、化学工学、生物学の基礎を学習します。また、物質化学基礎実験では化学実験のイロハを学びます。

    主要科目

    ・有機化学基礎
    ・無機化学基礎
    ・化学工学基礎
    ・生物学基礎

  • 3

    本格的な化学を学習する

    有機化学から物理化学までの大学初等レベルの内容を学習します。物質化学実験・演習ではさまざま実験を行い、様々な実験技術を身につけます。

    主要科目

    ・有機化学1
    ・無機化学1
    ・物理化学1
    ・物質化学実験・演習

  • 4

    実践的能力を身につける

    専門的な講義だけでなく,実験・演習を重点に置き,実践的な能力を身につけます。物質化学実験・演習では、各研究室における研究テーマに関連する実験(調査)を実施し、研究における課題解決のプロセスを学びます。創造化学実験では、研究室に配属後、指導教員と研究テーマについて検討し、自分で資料を調査ならびに簡単な実験を計画実行しながら、問題発見能力や解決能力を向上させます。

    主要科目

    ・有機化学2
    ・無機化学2
    ・物理化学2
    ・生化学1
    ・創造化学実験

  • 5

    より専門的で社会で活躍できる能力を養う

    さらに専門的で社会で活躍できる能力を養います。高分子化学や有機反応化学などより細分化された分野を学習します。卒業研究では各学会で学生発表できることを目指し、それぞれのテーマに取り組みます。

    主要科目

    ・高分子化学
    ・材料化学
    ・量子化学1・2
    ・生物工学
    ・卒業研究

コースの特徴

化学コースの柱となる5分野

  1. 《有機化学》有機化合物とは、炭素原子を含む化合物です。有機化学は、有機化合物の合成法、反応性、構造と性質について研究する分野であり、有機電子材料やプラスチックス等の高分子材料についても学びます。
  2. 《無機化学》無機化合物とは、炭素以外の元素で構成される化合物で、地球上にある物質の大部分は無機化合物です。無機化学は、無機化合物の構造と性質について研究する分野であり、金属、ガラス、セラミックス、鉱物などの物質について学びます。
  3. 《物理化学》物理化学は、原子、分子、エネルギーなどの基本概念を理解するために化学熱力学や量子力学的な視点で化学が対象とする物質を研究する分野であり、化学反応の機構、物質の構造や性質を決定する原因を学びます。
  4. 《化学工学》化学工学は、化学反応を利用した生産にかかわる様々な技術や工程で用いられる物質、反応を研究する分野であり、単位操作、触媒からプラント設計まで工業において必要とされる幅広い技術を学びます。
  5. 《生物学系科目》約30%が医薬品メーカーに就職する化学コースでは、生物系の科目も学びます。生物学の基礎を学んだ後、生命現象を化学的視点から捉えた生化学、主に微生物の機能を活用して社会に有用な物質や技術の創出を行う生物工学を学びます。また、実験科目においても微生物の取り扱いや生体物質の抽出・精製、酵素活性の測定を学びます。

本科卒業後、約70%が就職し、うち約55%が化学メーカー、約30%が医薬品メーカー、約7%が食品メーカーです。とくに大企業からの求人が多く、90%以上が東証プライム上場企業への就職です。また、約30%は大学、高専専攻科へ進学しています。

資格認定

化学分野

・甲種危険物取扱者
・乙類危険物取扱者
・品質管理検定
・eco検定(環境社会検定)

研究紹介

セラミックス粉末スケールアップ合成に関する研究

小西 智也教授 博士(工学)

セラミックス粉末スケールアップ合成に関する研究を行っています。合成には、噴霧乾燥法、水熱合成法、溶融急冷法を用います。評価には、結晶構造解析、熱重量・示差熱分析、元素分析を用います。

里山の保全と絶滅危惧種の生態調査

大田 直友教授 博士(理学)

日本の40%は「里山」ですが、社会の変化によって生態系が劣化し、絶滅危惧種が増えています。阿南市伊島のササユリや海岸林の松林を効率的に保全・管理する仕組みや組織づくり、科学的な情報に基づいた保全方法を研究しています。

電気デバイスの材料開発

鄭 涛准教授 博士(工学)

当研究室は、皆さんの生活に欠かせないリチウムイオン電池や太陽電池、キャパシタなどの電気デバイスの電極材料を開発しています。これらの電気デバイスの安全性やエネルギー密度・出力密度の向上を目指して、学生と一緒に、材料の設計・作製から性能評価まで幅広く研究を行っています。

有機合成反応開発

杉山 雄樹講師 博士(工学)

研究とは、新しい発見や、新しいものを生み出すことにあります。それには、挑戦し続ける姿勢が大切です。特に新しいモノを生み出すことのできる合成化学は、生命関連分野、環境・エネルギー分野、材料分野から、革新的な分子や材料を提供することを期待されています。当研究室では、有機化学をキーワードに「何を作るべきか」に対して、それを有効に行える「何かを作るための方法」を開発することを課題として研究を行っています。

教員紹介

氏 名職 名学 位校 務専門分野リンク
中村 厚信 教授 工学博士 副校長(総務) 電子物性 research map
小西 智也 教授 博士(工学) 化学コース主任 無機材料科学、材料工学 research map
大田 直友 教授 博士(理学) 5Z担任、地域連携・テクノセンター防災環境研究部門長、広報情報室メディア広報部門長 海洋生態学(ベントス)、生態系保全 research map
吉田 岳人 嘱託教授 博士(工学) 半導体素子工学、レーザー応用工学、ナノテクノロジー research map
大谷 卓 准教授 博士(理学) 教務主事補、3Z副担任 有機合成化学、有機材料化学 research map
鄭 涛 准教授 博士(工学) 1AM・AC・AZ担任 無機材料化学、炭素材料 research map
上田 康平 准教授 博士(理学) 4Z担任、地域連携・テクノセンター知的財産・研究支援部門(副・研究支援) 機能物性化学、熱測定 research map
杉山 雄樹 講師 博士(工学) 副学生主事 有機合成化学、高分子化学、有機金属化学 research map
江連 涼友 助教 博士(工学) 3Z担任、寮務主事補 化学工学 research map
東 和之 技術専門職員 博士(工学) 環境工学、分析化学 research map
高瀬 厚志 技術専門職員 生命医科学 research map

在校生・卒業生からのメッセージ

在校­­生

化学で無限の可能性を広げてみませんか?

徳永 夢叶(羽ノ浦中学校出身)

私が高専に入った当初の理由は「受験せずに推薦で入れたらラッキー」という軽い気持ちでした。化学の推薦で入ったのですが、1年生の時はどの科目よりも化学の点数が低かったです。それでも私は中学の時に出した希望の化学コースに進み、2年生からは化学を専攻しました。高専で学ぶ化学は、中学生の時の理科などのイメージとは違い、専門的な難しい構造式や分子レベルで物事を考えるものでした。2年生と3年生の時に1度辞めたいと考えたこともありました。でもその時に多くの先生方が相談に乗ってくださいました。高専のいいところは生徒の数に対して先生の数が多いことです。大学では教員が一人一人の生徒に真摯に向き合うことは難しいと思います。ですが高専では、進路相談などにもとても親身になってお話を聞いてくださいました。実際私は現在の4年生まで化学を学び、多くの知識を身につけました。今となっては高専を辞めなくてよかったと思います。2年生の時は基礎を学ぶので覚えることが多くて大変でしたが3年生、4年生になるにつれて2年生で学んだ知識を活かして解く応用問題なども増えました。そのときに、2年生で習った内容をより深く学ぶことができ、2年生の知識が4年生で繋がった時はとても感動しました。また私は有機化学が苦手だったのですが、今では有機化学の合成を学ぶことが楽しいです。エーテルやエポキシド、アルコールの合成など学んだ知識を全部活かしてある生成物を作ると言ったことができる点が化学の面白いところだと感じます。化学には無限の可能性があると私は思っています。世の中にはまだまだ知られていない反応式がたくさんあると言われています。自分が考えた反応が世の中の役に立つかもしれません。化学で無限の可能性を広げてみませんか?きっとあなたの将来の選択肢も広がるはずです。

選択の先にはきっと明るい未来が待っている

漆原 拓斗(藍住中学校出身)

中学3年生の冬、私は両親の言葉がきっかけで急遽、阿南高専を受験することを決めました。入学当初は同じ中学の子が誰も居なかったこともあり、不安で仕方なかったことを覚えています。2年生に上がるに伴って、高専生活における最も大きな決定、コース選択があります。熟考の末、私は化学コースに行くことを決断しました。私は2年生の頃からさまざまなことに取り組み、挑戦してきました。これらを通し、自分自身、人としてとても成長出来たと実感しています。また、高専生活でのエピソード作りは就職、進学にとても大切です。是非皆さんも低学年の内からいろいろなことに挑戦して下さい。今思い返せば、自分の経験の多くは化学の教員方に与えて頂いたものです。改めて、化学に来ていなければ、豊富な経験を積むことは出来なかったと感じています。現在、私は皆とは少し違う進路に向かって努力しています。初め、私は進路を伝えるのに戸惑いを感じていましたが、蓋を開けると、化学の教員の方々は親身に相談を受けて下さいました。化学では1人1人の進路に対して教員方が手厚くサポートして下さいます。この点が化学コースの強みだと私は考えます。コース選択では多くの人が後悔するとよく耳にします。ですが、自分は化学コースに入ったことを一度も後悔したことはありません。皆さんも周りに流されるのではなく、自分を持ち、後悔のない選択をして下さい。その選択の先にはきっと明るい未来が待っています!

卒業生

化学の世界に足を踏み入れてみませんか?

谷 綾乃(九州大学工学部物質科学工学科応用化学コース)

「白衣を着てみたい。」そんな単純すぎる理由で私は化学コースを選びました。化学コースでは、たくさんの面白い実験を通して化学の知識や実験技術、実験ノートやレポートの書き方などを先生方の手厚い指導の下、段階を踏んでゆっくりと着実に身に付けることができます。「The・化学!」のような溶液の色変化が綺麗な実験や、染料を合成していろんな種類の布を染色する実験などは特に楽しく、今でも鮮明に覚えています。これらの経験は日々の座学へのモチベーションにも繋がります。高専入学当初は、高専から大学に編入できることを知らなかった私が、化学にハマり、もっとたくさん化学を学ぶため大学編入したワケはここにあります。「百聞は一見に如かず」、皆さんも化学の世界に足を踏み入れてみませんか?

化学コース、オススメです。

近藤 渉(日東電工株式会社)

私は自分の手でものづくりをしたいという気持ちから、化学メーカーの研究開発職に就職しました。就職して感じた高専に入って良かったと考えることは2つあります。1つ目は早くから実践的な実験を行えることです。阿南高専では3年間、週に1回の実験と、最終学年で自分の興味があることを中心に研究することができます。実験器具や装置を使えるようになるだけでなく、考察や次の実験計画などを主体的に取り組めるため、思考力や計画性を養うことができます。これにより、就職後も様々な事に対し、「なぜ?」を意識し、新たな視点を持てて、開発業務に取り組めています。また、目標から逆算して計画を立てるなど、円滑に仕事を進めることが出来ています。このことから、実践的な実験を早くから出来ることは高専の良さであると考えています。2つ目は幅広く化学知識を学べることです。2年生からコースを専攻することができ、4年間、有機,無機など様々な化学分野を幅広く学ぶことが出来ます。就職後の開発分野は卒業研究時の専攻と違うことや様々な化学の知識が必要だったため、始めは大丈夫か不安でしたが、高専時代に培ってきた幅広い基礎知識の土台を活かして、現在では多角的な視点を持ち、自身を持って業務に取り組めています。このことから、幅広く化学を学べることは高専の良さであると考えます。以上のように、高専では早くから自分が学びたい分野を他に比べ先行して学ぶことができます。「早くから実験がしたい!」「化学に絞って知識を深めたい!」といった方は阿南高専の化学コースで学ぶことをオススメします。

授業風景の紹介

化学コースでは以下のような授業を実施しています。


物質化学基礎実験1

学習内容

化学コース配属後最初に行う実験であるため、化学実験における基礎(実験技術、化学実験室におけるルール、実験ノートの作成方法、実験結果の考察方法など)の修得を目的としています。無機イオンの定性分析、中和滴定、酸化還元滴定、キレート滴定などの分析実験を行います。

物質化学基礎実験2

学習内容

2年後期の有機化学系の実験です。有機合成実験装置の組み方、反応の追跡方法、再結晶などの精製方法、NMR測定や融点測定などの生成物の同定方法などを基礎から学習します。スリ付きのガラス器具など高価なガラス器具を使用します。

有機化学1

学習内容

有機化合物は身の回りの製品や生命体を構成する重要な物質です。これら膨大な数の有機化合物に関する知識を暗記だけに頼り学修するのは不可能でが、同じような物理的および化学的性質を示す化合物群に分類すれば、有機化合物もそれほど多くの種類はありません。本講義では共通の性質を示す官能基ごとに特徴的な物性・反応・合成および、分子レベルで機能性が異なることの基礎を学修することを目指します。

無機化学基礎

学習内容

無機化学基礎では、結晶構造の種類とその性質の特徴について習得し、結晶における構成粒子の配列の仕方を習学びます。また、様々な溶液の性質や物質が溶媒に溶解するしくみと溶解度を習得します。元素の分類と性質や
各族元素の特徴とその化合物の性質の習得を目指します。

分析化学

学習内容

分析化学は、試料に含まれる成分やその含有量を調べたり、それらの化学構造や存在状態を解析します。普段あまり意識をすることはありませんが、分析化学の技術や考え方は、医療・食品・環境など社会の広い分野で利用されています。基礎となる統計学的な考え方、溶液内の化学平衡(酸塩基平衡・錯生成平衡・沈殿平衡・分配平衡)に関する理論の習得を目指します。

生物学

学習内容

2年生の「生物学基礎」をベースに、生物や生物現象をさらに広範囲に取り扱い、生物学的に探究する能力と態度を身につけます。生物学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め、科学的な自然観を身につけます。

物質化学実験・演習2【生物工学実験】

学習内容

物質化学実験・演習2では、物理化学実験、化学工学実験、生物工学実験を行います。生物工学実験では、滅菌、無菌操作などに必要な器具の使い方を学び、微生物の培養を行います。

物質化学実験・演習2【化学工学実験】

学習内容

物質化学実験・演習2では、物理化学実験、化学工学実験、生物工学実験を行います。化学工学の知識は独創性や応用面への活用が必要であり、学習には実験と実習が欠かせません。装置に直接触れて、装置の構成と操作方法を理解すると共に理論および計算式を実験データと対比して理解できることを目指します。

生化学2

学習内容

生化学は、生物機能の化学的解明を行い、その成果を人類の生存や人間生活の向上を目指して行くための学問です。生化学2では、生物学の基礎的知識を身につけ、エンジニアとして必要な生物化学を理解することができる力をつけることを目指します。

実験設備の紹介

化学コースでは以下のような実験設備を導入し、授業や卒業研究などで使用しています。


核磁気共鳴装置(NMR)

メーカー

日本電子株式会社(にほんでんし、JEOL Ltd.)

用途・特徴

核磁気共鳴装置 (NMR)は有機化合物の構造決定や同定に必要不可欠な大型装置で、水素や炭素の結合状態や隣接する原子との関係などを知ることができます。水素原子のNMRであれば1ミリグラム程度の試料で測定ができます。非破壊測定なため試料が回収できることも長所です。