Interview

TADA Mai多田 舞

卒業学科:制御情報工学科
卒業年:2012年
勤務先:日亜化学工業株式会社
入社年:2012年
配属先:プレーンLED開発部

具体的な仕事内容を教えてください。

現在は液晶ディスプレイに必要なバックライト向けの面光源設計のメンバーとして様々な設計スキルを日々学びながら業務をしています。
開発品や試作品の各種測定や試験を行い、評価をしています。具体的には、光学測定、熱測定、荷重試験、信頼性試験等を通じて製品の性能を評価します。これにより、より良いものができるようフィードバックし課題解決に取り組んでいます。
評価環境を構築するため、2D・3DCADを用いて基板や治具の設計も手掛けています。評価用の基板や測定治具を設計することに加え、時にはハサミとテープを駆使して工作をすることもあります。小さな基板であっても、自分の設計したものが形になり、それを手に取った瞬間、達成感と喜びが込み上げてきます。
新規製品設計がうまくいくかどうか事前に確認するために、応力シミュレーションをする機会もあります。実測と解析結果との合わせ込みが難しいので、少しずつ知識と経験を蓄えているところです。
試験をする際も、部材を手配する際も、関係部署や社外メーカーの人とのやり取りは必須であり、色々な人と関わりながら円滑に業務を行えるようコミュニケーション力も磨いている最中です。
日々の業務の中で、様々なことを知ることに喜びを感じたり、小さなことでも達成感を得ることができたりと、モチベーションを上げることができるので楽しみながら業務をすることができています。

就職活動はどのように行いましたか。

“徳島県内の企業に就職する”の一択で就職活動をして日亜に採用してもらいました。

これまでのキャリアの中で、特に誇りに思うプロジェクトや業績を教えてください。

入社当時の製造部署では、先輩方から多くのご指導をいただき、チームの一員として連携、協働しながら働くことができました。これが私の初めのキャリアです。
産育休から復職した際に配属となった設計部署では、NTSV(0.3mmぐらいの薄い光源)という新しい製品の立ち上げに関わり、新製品の開発設計に携われたこともいい経験となっています。
今は面光源設計の部署に所属しています。新しいものを開発するチームの一員として様々な設計スキルを学べていること、世の中にはない新しいものを生み出していること、を楽しみながらキャリアを積んでいるところです。
開発やプロジェクトは一人でするものではなくチームでするものであり、日亜の一員としてものづくりができていることを誇りに思っています。

技術業界で女性として働くことの利点や課題はなんだと思いますか。

業務上で男女の性差は無いと思っているので、女性だからという利点はないと思っています。
現状女性の母数が少ないのが事実であり、今後女性の技術者が増えることによって足りないものが見えてくるはずです。女性だから有利・不利ではなく、年齢性別関係なく様々な個性が加わることで多様な見方ができるようになるという点が企業としても社会としても利点になるのだと思います。
技術職は常に新しい技術の知識やスキルの習得が必要となります。育休取得後に復職した際、他の職種に比べて知識やスキルの遅れによりブランクを感じさせやすいことが大きな課題だと感じています。
技術者に限った話ではないですが、ライフイベントごとに考えや優先順位が変わるため、「私が我慢したらいい」と考えたり、「母親だから」と無意識にマイナスな意識が働いていることも課題の一つだと考えています。

これまでのキャリアで役に立ったスキルや知識はなんだと思いますか。

まだまだ足りないところが多いですが、学生時代に学んだプログラミングや製図の基礎知識は間違いなく役に立っています。プログラミングの言語やCADソフトは様々なものがありますが、考え方の基礎はどれも重要です。
新しいものを作るためには、化学の知識、物理の知識、ものすごく重要だと感じています。
英語力は役に立ちます。中学レベルの英語力しか持ち合わせていませんし、翻訳ソフト任せですが、英語に抵抗感が生まれないよう意識的に触れるようにしています。
また、子育てで経験していることもキャリアであると感じます。
予想外の行動をする子どもと過ごす中で柔軟に対応する力、限られた時間の中で物事をこなすために優先順位をつける力、やらないことを決める力、など、完璧ではないですがマルチタスクの能力が身についたと思います。
子育てする中で、お出かけ先の公園で出会った人や園・学校のクラスのお友達の保護者さんなど、初対面の人と話をする機会がよくあるのでコミュニケーション能力も少し身についたと感じています。

継続的に学び、成長するためにどのような方法を取り入れていますか。

特に意識して取り入れていることはないですが、新しいことを知れるのが楽しいので、「学ばなくてはいけない」より「知りたい!学びたい!」と思えているのだと思います。
達成欲が強いと自覚しており、常に何かを成し遂げていたいという気持ちが比較的大きいかもしれないです。私にとっての達成というのは大きい成果を出すことだけではありません。新しいことを知り、少しずつ自分のものにしていくプロセスが非常に刺激的です。
日亜では、通信教育、様々なセミナー受講、資格取得など自分のタイミングで自己啓発のために学べる環境があります。積極的にインプットしようと意識していますが、吸収ばかりではなくアウトプットやフィードバックをしてうまく消化できるように心がけています。

女性技術者が働きやすい支援や取り組み、また改善が必要な点はありますか。

子育て世代にとって短時間勤務・時差勤務制度があることはとても心強いです。育児休業は最長3年取得することができ、子どもとの大切な時間を過ごすこともできます。有給休暇を時間単位で取得することもでき、とても働きやすい環境だと思います。
ベビーマッサージ教室(パパママ交流会)、おさがりお譲り会、ファミリーコンサート、岡川自然観察、親子木工教室、フットサル大会、等々(他にも色々あります)親子でも参加できる社内イベントも盛りだくさんです。おむつ替えシート・ベビーチェアが設置されているトイレもあり、小さいお子さん連れでの社内イベントにも参加しやすいと思います。
女性の健康課題に向き合うということからセルフケアイベントのお灸教室も開催されるなど、今まさに新しい取り組みを始めているところだと感じています。
阿南高専教授による講座、徳島大学での講座やセミナー、社内での様々な講座や研修等、技術者にとって学びの機会がたくさんあります。
これら全ては女性技術者に限ったことではないので、求められている答えではないかもしれませんが、自分の意識次第で有意義に過ごすことができる選択肢が豊富です。

企業や同僚からサポートを受けたことがありますか。(体調不良、子供の急な発熱時など)

毎日のように周りに助けられています。子どもが小さいうちは体調不良で急に休むことが多く、出勤して間もなく「発熱したのでお迎えに来てください」なんてこともあります。
コロナ禍では家族で次々と感染し1か月近く出社できない日もありました。今だけしか経験できないことなので、それも「子育ての醍醐味!」と楽しみながら日々過ごしています。
制度としては子の看護休暇があり、急な発熱や定期健診等で取得することができ、とても助けられています。
部署によるところがありますが、私の部署の上司も同僚も「家族優先で大丈夫だ」と言ってくれます。急遽休むことになれば、自分のペースでできる業務についてはスケジュール調整をします。しかし、大事な業務があるときは他のメンバーに代わりに対応してもらうこともあり、申し訳ないと思うこともあります。
こうして今、沢山の人に支えられている分、子育てが落ち着いたころには私も同じように後輩たちの世代に「仕事はまかせて家族優先で大丈夫だよ」と言ってあげられるよう、いい意味での“お互い様”な職場にしたいです。

今後女性が技術業界で活躍するために必要な支援は何だと思いますか。

女性特有の健康課題に対しての理解や支援が不可欠だと感じています。
女性優遇という意味ではなく、男女ともにヘルスリテラシーの向上が非常に重要だと考えています。
また、妊娠・出産・育児などのライフイベントによる影響が男性よりも女性の方が大きいため、寄り添い支援し続けられる仕組みが必要だと思います。
日亜では子育てをしながらでも働き続けられる勤務形態を支えるサポートは充実していると思います。

それにともなう変化は何だと思いますか。

女性自身がヘルスリテラシーを高めることで、不安の解消につながり、能力が十分に発揮できるようになるはずです。男性も女性の健康課題について向き合うことで企業全体の生産性の向上につながるのではないかと思います。
長期的なキャリアプランを描けるようになると、ライフイベントを経験しても安心して生き生きと働き続けることができるようになるでしょう。

どのようなキャリアプランを考えていますか。

日亜では部署によって女性の比率は全く違いますが、女性の母数は少ないです。女性の働く選択肢を一つでも増やし、誰しもが活躍できる環境を作っていきたいと漠然と思っています。子育てしながらでも、プライベートを充実させながらでも、それぞれのモチベーションで皆が生き生きと働ける職場になるよう、一社員の私にできることは何かと考えています。昇格や昇進には拘りませんが、自分の考えをしっかり持ち、実力をつけ、成果を出し、説得力のある人間になりたいです
キャリアプランは環境の変化によって変わっていいものだと思っています。
今の目標は、1人前の設計者になることです。製品の設計、評価環境の構築、最終の評価まで一人でこなせるようになりたいと、何年かかるか見当つきませんが私なりのペースで楽しみながら日々学んでいます。

高専に入学しようと思った志望理由を教えてください。(高専生だった場合)

「吹奏楽が盛んな高校にいこうかな~」程度にふわっと進路を考えていました。そんなとき、中学3年の学級担任の技術科の先生から「阿南高専っていうところがあるよ」と教えてもらったのが高専を知ったきっかけです。
大学受験のための勉強がない分、専門的なことを学ぶ時間が多く実務に直結した内容を学べると聞き、5年間一貫したカリキュラムというところを魅力的に感じました。
ものづくりが好きで、早く働きたいと思っていた私には「就職率100%」というところが子どもながらに一番インパクトを受けました。
さらに、高専卒業後は進学することもできると知り、進路の選択肢が広いことが入学の決め手でした。

学んだ事と、実際の仕事で必要とされるスキルや知識に違いがありましたか。

実際の業務の中で必要とされる知識として、学生時代に学んだことに違いはないと思いますが、色々な分野の知識が必要になるので十分ではないと思います。
実際に業務の中で必要な知識は日々の業務をしながら学んでいます。

勉強や部活動にはどのように取り組んでいましたか。

高専時代は複数の部活動や同好会に所属していました。入学当初から卒業まで続けられてはいませんが、参加していた期間は全力で青春を楽しんでいました。
高専から始めたバレーボールでは、授業が終われば一目散に体育館に向かい練習に励んでいました。部活動後に勉強するのは体力が要りましたが、通学の時間、休み時間を使って勉強していました。地区大会決勝戦で勝利し全国大会出場が決まった時の感情は、簡単には言い表せられないですが今でも鮮明に覚えています。
バレー部のみんなとはOB会等の集まりで社会人になってからでも交流があります。「活躍の場が違うけど仲間だよ」と言ってくださった当時の顧問の先生・仲間に感謝しています。
高専時代の活動で自分についてすごく悩んだ時期もありましたし、沢山の方に迷惑をかけてきた自信しかありませんが、色々な事に触れて自分の視野が広がりいい刺激になりました。新しいことに触れて新しいことが好きになっても、それは新しい自分が見つかったという事であり、前向きな経験だと思っています。
これらの経験があったから今の自分がいるのだと今となっては良い思い出であり、支えてくれた方々に感謝しています。

学生時代に身につけておくべきスキル、もしくは心構えがあれば教えてください。

コミュニケーション力、論理的思考力、プレゼンテーション力、英語力、プログラミングスキル。これは大事だと思います。私自身が学生時代に身につけてなかったものばかりです。
業務で必要なスキルは働きながら自然と身につきます。もちろん、学生時代に身につけていれば働きながら更にもっと先を目指せます。
心構えとは違いますが、学生の(自由な時間が多い)うちに、たくさん遊び、たくさんの物に触れ、時には立ち止まって休み、自分の“好き”を見つけてほしいと思います。
情報が多く検索すれば何でも知れて、何でもすぐに手に入る便利な世の中ですが、何事も「なぜ?」と自分で考える、自分なりの表現で伝える、ということは大切にしてほしいです。
学生時代はサボってもちょっと叱られる程度ですが、社会人になれば責任が伴います。
「責任を取る」のではなく「責任をもって行動する」のだと、日々感じています。

休日はどのように過ごしていますか。オンとオフの切り替えで、心がけていることがあれば教えてください。

休日は家族の時間を楽しんで過ごしています。料理・習い事・スポーツ・釣り・キャンプ・旅行・ゲームなど、子どもたちと一緒に色々なことを楽しんでいます。
子どものころから音楽をしていたこともあり、ずっと音楽には触れていたい性なのか、何かしらの音楽活動をマイペースに続けています。
正直な話、月曜に出社して「先週何してたっけ…今日何するんだっけ…」とONにできない日々が多々あります。「機械じゃないので多少ON/OFFがうまくいかない日があっても人間味があっていいかな」と、心にゆとりを持つようにしています。

女子学生に伝えたいメッセージ、アドバイスなどがあればお願いいたします。

私が皆さんのお手本になるつもりはありません。皆さんそれぞれの生き方があるから決して真似する必要もありません。
でも、私がこうして伝えることで一人でも多くの学生さんに色んな考え方・見方があることを知ってもらい、将来の希望や進路を決めるきっかけになれば嬉しいです。そしてその進路が日亜であればより一層嬉しく、一緒に働けることを待ち望んでいます。
社会人になってからでも親になってからでも様々なことに挑戦できます。私もたくさん挑戦していきます。
色々と書きましたが、私はまだまだ未熟者です。日々時間に追われながら精一杯なのが現状ですが、人生一度きり、毎日自分にできることを全力で楽しみましょう!